「信書」について<Ⅰ>定義編

一般の人が日頃自宅の郵便箱に送られてくる配達物が「信書」に該当するか否かを考えることは少ないと思います。
しかし、送る側は常にそのことに注意をしていなければなりません。

「信書」とは?


2009年6月、郵便法で郵便事業会社(当時)以外の送達を禁じられた「信書」に該当する文書(※1)を、埼玉県職員が宅配便会社のメール便サービスを利用したとして2011年に県警が郵便法違反容疑で捜査をしました。
この容疑で自治体が捜査されるのは極めて異例であり、当時のニュースにより大きな波紋を拡げました。

以来、メール便サービスを行っている会社は預かる発送物の中身に神経を尖らせるようになり、伝票にも内容物を記載するよう要請されるようになりました。
最近ではコンビニでもメール便を扱う店舗があり、発送する内容や記載をめぐりお客さんと店員さんの間でのトラブルも多くはないにしろあるようです。

さて、この「信書」とはいったいどういうものを指すのでしょうか。
もともとは「信書」の定義については法律に定めがなく、戦前からの判例により「信書とは通信文を包括する文書なり而して通信とは特定の人に対し自己の意思を表示し若くは或る事実を通知するの謂なる」と示されてきました。

その後、信書便法制定とともに、郵便法を改正し、次の内容に定められました。

「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」

これだけではなかなか「信書」の定義が今一つつかめません。そこで総務省は平成15年総務省告示第270号にて「信書に該当する文書に関する指針」を定めました。
同指針では、以下の3点が信書の判断基準になるとしています。

①「特定の受取人」とは、差出人がその意思の表示又は事実の通知を受ける者として特に定めた者であり、
②「意思を表示し、又は事実を通知する」とは、差出人の考えや思いを表し、又は現実に起こり若しくは存在する事柄等の事実を伝えることであり、
③「文書」とは、文字、記号、符号等人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物のことであるとされています。
(ただし、CD等の電磁的記録物は、それに記載された情報が人の知覚によって認識できないものであるので、信書には該当しないとされています。)

このように見ていきますと、単に手紙形式の文章(拝啓・敬具等)が記載されているからといって信書に該当する訳ではなく、また同一内容で大量に発送されるDMであっても特定の受取人に対して事実を通知する内容ならば信書に該当するということです。

例えば、文面(宛名ではなく)に記載された内容に「株式会社アルファラン 御中」といった表現をした場合、アルファランという法人に意思の表示又は事実の通知をしていることとなるため、「信書に該当」するのです。

また、個人情報があるからといって必ずしも信書に該当するとは言えないのです。

こういった形で、ケースバイケースで見ていかないとなかなか理解し判断することはできません。
左の表は一般的に信書を説明する際に出てくる内容ですが、単にこの表だけを見ていても判断できるものではなく、あくまでそのケースごとに先ほどの3点に当てはめて判断されるべきものです。
(ダイレクトメールについては表の両方に記載がありますが、信書の該当がまさに内容によって判断されるべき典型例です。)

それでは、次号<Ⅱ>は上記の内容をもとに、ケーススタディをしていきます。

※1:平成15年4月に信書便法が施行され、許可された民間事業主にも信書の取り扱いが可能となりました。