「信書」について<Ⅱ>ケーススタディ編①

さて、前回、「信書」の定義について述べました。「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」
の判断基準のポイントは、
①「特定の受取人」 ②「意思を表示し、又は事実を通知する」 ③「文書」
でした。この内容をもとに、ケーススタディをしてまいりましょう。

信書のケーススタディ

【ケース1】「履歴書の送付」

たとえば就活の際に、会社に履歴書などを送りますが、応募者が履歴書を会社に送る際は”企業の募集に応じる(応募)という事実を通知した文書”とみなされるため「信書」に該当します。
ところで、その履歴書を応募者に返却することがありますが、単に会社側が応募者に返送する場合には”その履歴書そのものには事実の通知がない”として「信書に該当しない」のです。ただし、合否通知と一緒に送付するなど”通知の意図”がある場合は”事実の通知”ですから通知文が信書に該当するわけです。
このケースは、「履歴書=信書」とは言い切れない例です。旅行申込書の控えを旅行会社から申し込んだ顧客に送付する場合も同様です。

【ケース2】「取引先の契約書・請求書」

顧客・取引先から自社あてに届く契約申込書や請求書は、自社に対して顧客・取引先の意思を示し、又は事実を通知する文書であるため、信書に該当します。これは、会社に到達した時点で信書の送達は完了することになります。
ところで、自社あての契約申込書や請求書について、例えば本社経理部等で受付処理をしているのであれば、その本社経理部が受け付けた時点で顧客・取引先の意思の表示又は事実の通知が会社に到達し信書の送達が完了です。その「信書の送達が完了」した後の契約申込書や請求書をそのまま本店経理部から支社に送付する場合は、信書の送達には該当しません。
なお、本社経理部にて受け付けた契約申込書や請求書に付記したり、添付するなどにより、支社に対して「申込書の内容確認をしてほしい」とか、「取引先への代金支払は支社にて行ってほしい」等という本社経理部の意思が表示されたものを支社に送付する場合は、信書の送達に該当します。

【ケース3】「証明書の送付」

例えば、自分が務めている会社に「在職証明書」の発行を依頼した場合、その証明を行う者(会社)からその証明書を受ける者(自分)に対して送付する場合は、差出人(会社)から特定の受取人(自分)に対して意思(証明)を表示し、又は事実(在職)を通知する文書(証明書)であるため、信書の送達に該当します。
一方、証明書を受けとった者(自分)が、その証明書の原本やコピーを単に他所(例えば家族)へそのまま送付する場合は、信書の送達に該当しません。(ケース2と類似)

【ケース4】「ダイレクト・メール(DM)」

DMで、文書自体に受取人が記載されている文書の場合、例えば、○○様(個人・法人)・◇◇会員の皆様・△△購読者の皆様・▽▽高校卒業生の皆様など、文書自体が受取人を特定していることが明らかで、その特定の受取人に対して意思を表示し又は事実を通知する文書となるため信書に該当します。
ただし、「お客様各位」ならば”該当しない”のです。実際のお客様かどうかにかかわらず商取引上の慣用語として使用されていることから、この文言のみでは受取人を特定しているとまではいえないわけです。その場合は、次の【ケース5】のように文面の内容自体が論点となります。

【ケース5】「契約関係にある文面」

商品の購入等利用関係があることを示す文言や契約関係等が示されている文面の場合、例えば、「先日は、弊社●●石鹸をご購入いただきありがとうございます・・・・・」といった内容は信書に該当します。
しかし、「日ごろ御利用いただきありがとうございます。」ならば実際の利用の有無にかかわらず商取引上の慣用語として使用されていることから、このような文言のみでは商品の購入等利用関係があることを示す文言には該当しないとされます。

【ケース6】「会員へのアナウンス」

□□ファンクラブの会員に、もうすぐ会員有効期限が切れるという事実を通知して契約継続を促す内容の文面は信書に該当します。
その他、会員カードのポイント通知に併せた特別売り出しの案内や車検満了の通知に併せた車検割引の案内なども該当します。

ケース7は②へ続く・・・・・・