「あこがれの郵便馬車」

NHK連続テレビ小説『エール』で、主人公のモデルとなった古関裕而氏が作曲、NHK紅白歌合戦に7回出場した昭和を代表する歌手・岡本敦郎氏の昭和25年頃のヒット曲で、昭和一ケタ生まれの方は覚えている人も多いでしょう。
軽快なメロディと岡本敦郎氏のにこやかな笑顔が、詩の世界を一層鮮明に浮かびあがらせてくれます。

「あこがれの郵便馬車」

歌:岡本敦郎
作詞:丘灯至夫
作曲:古関裕而

「南の丘を はるばると
郵便馬車が やってくる
嬉しい便りを 乗せて
ひずめの ひびきもかるく
耳をすまして ごらんなさい
ほらほらほらほら やってくる
郵便馬車は 夢の馬車」

翌年には「あこがれの郵便馬車」の子供版として、五十嵐まさ路作曲・山本雅之作詞で「赤い郵便馬車」という歌も世に出ました。昭和41年には倍賞千恵子さんカバーのレコードも発売されていたとか。

「赤い郵便馬車」

歌:安田章子
作詞:五十嵐まさ路
作曲:山本雅之

「赤い小さな 郵便馬車が
峠の小道を 越えていく
リンリンシャンシャン 小鈴を鳴らし
木の葉がくれに 消えては見える
遠い町から 便りを運ぶ」

遠くから聞こえる小さな鈴の音がうっすらと聞こえるようで、いまの都会の喧騒の中では想像もできません。
クラシックの分野では、日本では「クシコスの郵便馬車」とのタイトルでしられる曲は運動会・体育祭などでは定番のBGMです。原題の「クシコス・ポスト(Csikos Post)」はハンガリー語で、”Csikos”(チコーシュ)=「馬」、”Post”(ポシュット)=「郵便」を意味し、”Csikos Post”全体で「郵便馬車」という意味だそうです。日本では「クシコス」を地名と勘違いした結果「クシコスの郵便馬車」との題名になったとか。(現在は日本でも「クシコス・ポスト」が一般的になったようです。)

日本での馬車の登場はいつから?


ところで、日本の郵便配達で馬車が使われていたのはいつごろなのでしょうか。
そもそも馬車は、西洋では古くから4輪のものが利用されていましたが、日本ではウシを用いたいわゆる「牛車」が近世期まで使われており、馬車の登場は明治時代からのようです。
日本の郵便制度がスタートしたのは明治4年。明治時代の約半世紀の間、日本橋を中心に郵便物の搬送のために郵便馬車は大いに活躍したことでしょう。
しかし、時の流れは早く、自動車という搬送手段は徐々に郵便馬車にとって代わりました。
初期の郵便制度を支えた功労者の姿は、歌となり絵となって、人々の心に残っていくのでしょう。