切手の偽造と防止

紙幣と比べた場合、切手の額面が低額で偽造コストの割には得られる利益が少ないためか、偽札事件と比べるとはるかにその発生件数は少ないようです。

偽造防止のための工夫


「竜文切手」を知っている人は切手通でしょう。これは日本で初めて発行された切手で、そのデザインに「向き合った竜」が使用されたことでこう呼ばれるそうです。
明治4年に郵便制度発足と同時に発行された「竜文切手」は48文・100文・200文・500文の4種類(文とは当時の貨幣単位)。原案の時点では花柄デザインでしたが、偽造しにくくするために複雑な絵柄にしたようです。

近年の偽造事件としては、1913(大正2)年に発生した「菊切手偽造事件」がその代表的な事例です。菊切手とは、明治32年から使用されていた通常切手で印面中央に菊花紋章が大きく描かれていることからこの名で呼ばれています。
菊切手の偽造事件は、横浜元町郵便局の局員が書留郵便用に貼付されていた10銭切手の異常に気づいたことで発覚。調査の結果、主犯格の人物の他、切手売捌総代人や印刷業者が逮捕され、額面にして約1万円分の切手が押収されて事件は早々に収束しました。


最近のニュースでは、平成22年に、80円切手を偽造して郵便物に貼り投函した大阪の派遣会社社長が切手偽造容疑で逮捕されました。本物の切手シートを会社でカラーコピーし「目打ち」と呼ばれる縁のギザギザの部分はカッターナイフで切って再現。「1枚つくるのに1時間かかっていたのが、上達して40分まで短縮した」とのこと。

ところで、現在の楕円の目打ちは、丸の目打ちよりも偽造するのが困難だからとの理由で採用されたそうです。日本の切手で最初に楕円目打ちが用いられたのは、平成9年発行の額面印字コイル切手とのこと。

楕円目打ち以外にも、切手には様々な偽造防止技術が盛り込まれています。お札に利用されている技術や、用紙やインクにも特殊なものを使用し「見えない防止策」も取られていて偽造された切手の場合は消印用機械を通るときに自動的にはじかれる仕組みになっているようです。

但し、そういった技術が盛り込まれる以前の切手もまだまだ大量に流通しているため、やはり郵便職員の感と経験も重要な「偽造防止」の歯止めになっているのでしょう。
切手を舐めて貼る人ならば、味で本物を見分けるかもしれませんが。。。。