古本の中からの書簡

サラリーマンの聖地・新橋駅は、SL広場で古本市が開催されることでも有名です。
以前、古本市が立った際にちょっと立ち寄ったら、やけに古い本を扱っている店先に「蘇峰自伝」という、これまたいかにも古めかしい本が目を魅きました。

「蘇峰自伝」開いてみるとそこに。。。

「蘇峰」とは、いうまでもなく明治から昭和にかけてのジャーナリスト・徳富蘇峰のこと。私の住む大田区・山王には旧居の残る蘇峰公園(山王草堂)があり、気になって開いてみようと思ったのが始まりでした。

長い年月の間誰も開いたことがないのか外箱から出すのに一苦労しましたが、その厚さ5センチほどの本を開いたら思わず「あっ!」と叫んでしまいました。
何と、中に古い手紙が挟まったままになっていたのです。この自伝自体が昭和10年に発行されたものであり、消印は不鮮明ながらも30銭切手が貼ってあったことから昭和初期・戦前の手紙と推測。
手紙の挟まっていたところだけページの色が変わるほどだから、70年以上もこのままだったのかもしれない。。。。
一瞬の動揺を押さえつつ、隣にあった蘇峰著の本と一緒に何事もなかったかのように千円札で購入。戻ってすぐにインターネットで調べてみました。

毛筆で書かれた差出人は群馬県勢多郡のS氏。宛先は静岡県富士郡のH氏となっていました。

差出人のS氏という人物について、徳富蘇峰との関係を調べてみると、蘇峰に対して書簡を送った人物にこの名前があり、何かしらかの交流がうかがえました。
同名に東京の警察幹部や地方議会議員であった人物が検索でヒットするのですが、一致するか否かはまだ不明。
一方、H氏という人物については蘇峰との関係は不明ですが、富士市の発展に尽力した人物がヒットします。
しかし、手紙を受け取ったH氏が、自宅にあった「蘇峰自伝」に何かしらの理由で挟んだまま忘れたと考えるのが妥当だと思うので、やはりH氏も蘇峰と全くの無関係ではなく、人を介してでも繋がっていたと考えたいものです。

手紙の中身も毛筆で書かれた達筆な文字。残念ながら全くと言っていいほど内容は読めませんでした。
たまたま見つけた古本と手紙から、思わぬ苦闘を強いられる結果となりましたが、歴史的人物とつながる人の手紙というのは何とも言えないワクワクした嬉しさもあります。

癖にならないようにしないといけない!と思いつつ、古本市が立つ度にきっとまた古めかしい厚い本を物色するのでしょう。