「信書」について<Ⅱ>ケーススタディ編②

前回、「信書」のケーススタディを見ていきました。
今回はその続編です。
何度も申し上げますが、信書の定義は「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書をいう。」という、万人がわからない内容です。
それを紐解く一助になればと思います。

信書のケーススタディ(後編)

【ケース7】「宅配便の添え状・送り状」

商品を宅配便で納品する際に、貨物の授受・代金に関する簡単な通信文を同梱した場合、無封であれば”該当しない”になります。郵便法第4条第3項但書にて、信書であっても貨物に添付する無封の添え状又は送り状については、運送営業者による送達が認められているのです。
ただし、荷物とは関係のない通信文は”該当”です。別途商品の案内やキャンペーンの案内などが記載されている場合は単なる添え状・送り状の域を超えて「商品が主・添え状が従」の関係にならず「添え状が主・商品が従」となるため、信書とみなされるわけです。
尚、「無封」とは、「封筒等に納めていない状態」、「封筒等に納めて納入口を閉じていない状態」のことで、封筒等に納めて納入口を閉じている場合であっても透明で内容物を透視することができる状態や、封筒等の納入口付近に「開閉自由」等の記載をし運送営業者等が内容物の確認のために任意に開閉しても差し支えないものであることが一見して判別できるようにしてある状態も「無封」に含まれます。

【ケース8】「チラシ・キャンペーンDM」

街頭における配布や新聞折り込みを前提として作成されるチラシは信書に該当しません。来店した顧客に手渡すなどにより不特定の者に配布されている店舗移転のお知らせを他の顧客に送付する場合や、店舗やロビー等に置いて関心を持った者に自由に持ち帰らせるなど不特定の者に配布されているイベント・セミナー等の案内チラシを取引先に送付する場合などです。
ただし、会員限定キャンペーン等のDM、例えば会員限定のセールの開催案内を会員に送付する場合は”該当”です。

【ケース9】「親展」

封筒に「親展」と記載されているからといってすべて信書になるとはかぎりません。信書に該当するか否かは、その封筒に収められた文書の内容が特定の受取人に対して”意思を表示”したり、”事実を通知”するものであるか否かによって判断されます。

【ケース10】「本店から支店へまとめて送付」

会社から各従業員に対する「意思を表示したり、事実を通知する」文書を、本社において全従業員分を一括作成し、支店等に所属する従業員分をまとめて送付する場合には、本社からその支店等への送付については、これにより会社が意思を表示したり、事実を通知するものではないため、信書の送達には該当しません。
ただし、その支店等においてその文書を各従業員に交付する場合は信書の送達です。

【ケース11】「設計図面」

家の設計図面や施工図は、単にその施工に携わる者が参照するために作成されるものであれば、特定の者に対し意思を表示し又は事実を通知する文書ではないため、信書には該当しません。

【ケース12】「論文など」

作文、俳句、卒業論文、講習会冊子、裁判記録などは、広く一般に自らの考えや研究成果を知らしめるために作成される文書であるため、信書には該当しません。

【ケース13】「取扱説明書」

市販されている製品の取扱説明書などは、広くその製品の使用者一般に対して、その製品の使用方法や注意などの意思を表示し、又は事実を知らせるものであって、特定の受取人に対するものではないため、信書には該当しません。市販されている医薬品や家庭用・事業用の機器、ソフトウェアなどの取扱説明書、約款、目論見書なども同様です。
尚、顧客に送る商品サンプルも、文書ではないため信書には該当しません。

【ケース14】「プレゼント」と「ラブレター」

お付き合いをしている彼女に、どんなに愛しているかを書いたラブレターをプレゼントと一緒に宅配便で送った場合、「彼女への想いを綴ったラブレター」 = 「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文」ですので「信書」に該当しますし、宅配便の添え状の範囲を大きく逸脱しているため、同梱することは違法です。
尚、プレゼントの単なる明細や簡単な説明書であれば無封ならば同梱可能です。

【ケース15】おまけ

・信書をFAXや電子メールで送付しても、物理的に送達されるわけではないため郵便法違反ではありません。(関連がありません。)
・CDやUSBメモリーに入れた信書を送付しても問題ありません。記載された情報が人間の知覚によっては認識できず、PCなどを介さなければ内容がわからないものだからです。
・バイク便で信書を送付する場合、そのバイク便業者が特定信書便事業許可を得ていて、一定の条件をクリアしていれば可能です。
・納税に関する書類を「ゆうメール」で送るのはNGです。納税関係書類は信書ですが、そもそも「ゆうメール」は郵便には該当しない運送サービス類です。
・郵便局の「レターパック」で近況を知らせる手紙を送るのはOKです。しかし、郵便局の「ゆうパック」で送る場合は添え状であっても内容物に関係のない手紙ですのでNGです。

長々書きましたが、「書は言を尽くさず、言は意を尽くさず」ですから、送付する文面が真意とは違う受け取られ方をすることもあります。信書か否かの判断に迷う場合は最寄の郵便局に直接お問い合わせ頂いた方が宜しいでしょう。